腐敗( φθορᾶς <phthoras>―IIペテロ1:4)
【回復訳】 彼はその栄光と美徳を通して、尊く、際立って偉大な約束を、わたしたちにすでに与えてくださっています.それは、これらの約束を通して、あなたがたが情欲によるこの世の腐敗から逃れて、神聖な性質にあずかる者となるためです。
主だった日本語訳聖書では「phthoras」を「滅びること」、「滅び」、「退廃」などと訳しています。聖書をお持ちの方は、お手元の聖書と比較してみてください。
ギリシャ語
δι’ ὧν τὰ τίμια καὶ μέγιστα ἡμῖν ἐπαγγέλματα δεδώρηται, ἵνα διὰ τούτων γένησθε θείας κοινωνοὶ φύσεως, ἀποφυγόντες τῆς ἐν τῷ κόσμῳ ἐν ἐπιθυμίᾳ φθορᾶς.
Strong's Concordance
phthora: destruction, corruption
Original Word: φθορά, ᾶς, ἡ
Part of Speech: Noun, Feminine
Transliteration: phthora
Phonetic Spelling: (fthor-ah')
Definition: destruction, corruption
Usage: corruption, destruction, decay, rottenness, decomposition.
解説
この手紙の中で、ペテロは神の統治上の裁きの下にある背教の結果について、三つの異なるギリシャ語を用いています。
(1) 「アポルミ」(Apollumi)は、「徹底的に滅ぼす」を意味します。中間態では、第3章6節にあるように、「滅びる」。この思想は、絶滅ではなく、破壊、破損です(存在についてではなく、幸福について)。マタイ10:28、22:7、マルコ12:9、ルカ17:27、29、ヨハネ3:16、10:28、17:12、Ⅰコリント10:9、10、Ⅱコリント2:15、4:3、Ⅱテサロニケ2:10、ユダ5、11で、この言葉は、神の統治上の裁きについてさらに多く啓示しています。3:9では、神の統治上の懲らしめの刑罰を示しています。
(2) 「アポレイア」(Apoleia)は、「アポルミ」(Apollumi)と同類語で、破損、(存在についてではなく、幸福の)破壊、破滅、(体の、霊の、永遠の)滅亡を表す言葉です。それは2:1では「滅びの」、「滅び」と訳され、2:3、3:7では「滅び」と訳され、3:16では「破壊」と訳されています。同じ言葉が、神の各種の裁きの異なる結果を示すのに用いられています(参照、Ⅰペテロ1:17のノート2の第二段落)。2:1、3、3:7、ヨハネ17:12、ローマ9:22、ピリピ1:28、3:19、Ⅱテサロニケ2:3、啓示録17:8、11で使われる場合には、永遠の滅亡を意味します。3:16(参照、ノート4)とヘブル10:39(参照、ノート2)で使われる場合には、永遠の滅亡ではなく、神の統治上の懲らしめの刑罰を意味します。マタイ7:13とⅠテモテ6:9では、いずれの場合にも用いられる原則を示しています。
(3) 「フトーラ」(Phthora)は、道徳、魂、体の破滅に至る腐敗、腐敗をもたらす破壊、腐敗によって破壊することを示す言葉です。それは、1:4と2:19では「腐敗」と訳され、2:12では「破壊するため」、「腐敗」と訳されています。その動詞形は、2:12では未来形の受動態で「破壊させられる」と訳され、ユダ10では現在形の受動態で「腐敗させられていく」と訳されています。そのような意味は、ローマ8:21、Ⅰコリント3:17とノート1と2、15:33、Ⅱコリント7:2、11:3、ガラテヤ6:8、啓示録11:18、19:2でさらに見ることができます。(IIペテロ2:1のフットノート5)
使徒は第一の手紙で信者たちに、キリストが彼らをむなしい生活様式から贖われたと告げました(Ⅰペテロ1:18-19)。それは、彼らが肉の情欲を避け(Ⅰペテロ2:11)、もはや肉体における人の情欲の中で生きることがないためです(Ⅰペテロ4:2)。今や彼は第二の手紙で、彼らが情欲の堕落から逃れることのできるエネルギー、力と、これを逃れた結果を彼らに啓示しています。そのエネルギーは神聖な命の美徳であり、その結果は神の神聖な性質にあずかることであり、こうして三一の神ご自身の豊富のすべてを享受します。神聖な性質にあずかることにおいて、また神であるすべてを享受することにおいて、神聖な性質の豊富のすべては、5節から7節に記述されているように、完全に発展するでしょう。この世の情欲の腐敗から逃れ、わたしたちの神聖な命の成長を妨げるものを逃れ、わたしたちは解放されて、神聖な性質にあずかる者となり、その発展の中で、神の美徳によってその豊富を極みまで享受し、彼の栄光に至ります。(IIペテロ1:4フットノート 5)